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働くこと [いま、ここ、わたし]

今年の1月末から地元スーパーの水産コーナーで働いている。

商品に値段をつけたり棚に並べたりするのが主な仕事。

出来上がったシャリの上にネタをのっけるだけの簡単なお寿司を作ったりもしている。

まったく未経験の仕事で最初の1~2ヶ月は大混乱していたけど、最近は大分落ち着いてきて、日々仕事がこなせるようになってきた。

★ ★ ★

そこのスーパーは勤務時間の管理がしっかりしていて、無給で残業させられたり、早く出勤しないといけないみたいなことはない。

今までは残業、休日出勤当たり前の仕事だったし、一つのプロジェクトが短くても1年、長かったら3年というものだったけど、今の仕事は一日が終われば仕事は終わりで、変に尾を引かないのがとても新鮮に感じている。

シフトは朝の8時から13時までの1日5時間で、月17日間の勤務。

体を使うので疲れはするしお腹も空くけれど、それもご飯を食べて寝れば回復するし、頭を使う仕事と比べると疲れ方が全く違う。

働いてみるまで、同じ仕事と言ってもこんなに違うなんて想像してなかったから、とてもびっくりしている。

★ ★ ★

この仕事はたまたまタウンワークのアプリで見つけた仕事で狙って探したものではない。

去年の後半ぐらいから貯金の切り崩しの限界は分かっていたので、何か仕事をしようとは思っていた。

いくつか候補はあって年明けにどれかやろうと思っていたら、募集がなくなっていたりしてどうしようかと思っていたところで、友達から「スーパーとかにある就職雑誌みてみれば?」と言われて、まずは雑誌のタウンワークをもらってきて見るようになった。

電車に乗らないでやれる地元の仕事にしたいと思っていたので、ちょうどいい感じでもあった。

そこにはものすごい沢山の仕事があった。本当に沢山。

でもやりたいと思えるものはなくて、どうしようかなぁと思っていたところに、アプリ版があることに気付いてインストールし、検索条件で「現在地から~km以内」みたいなのがあり、何気なく検索して出てきたのが、今働いているスーパーだった。

そのスーパーは4年前に引っ越してきてからずっと使っていたところで、どんな感じかは分かっていたし、店員さんの感じも嫌いではなかった。

「ここだ!」と思って応募、面接し、採用されるんだけど、元々は時給の高い「早朝品出し」を希望していて、でも面接で水産コーナーの人手が足りないという話が出て「もし嫌じゃなければどうですか」と言われて、嫌いじゃないですと答えたら水産コーナーに配属になった。

★ ★ ★

面接を受けている時、水産が嫌じゃないかどうかの話になり、魚介類の匂いが苦手だったり、水を使うことや汚れたりする仕事でもあって、あまり応募がこないんです、と面接官が話していた。

そうなんだと少し不思議に思いながら、自分は北海道出身で魚を食べて育ったし、父親が水産加工の仕事をしてたので、まったく抵抗はありません、みたいな答え方をした。

答えた時はあくまで面接中のやり取りの一つとして答えたんだけど、言ってからじわじわ何か嬉しい気持ちが湧いてきて、あれ、何だこの気持ち、と思いつつも分からないまま面接は終わった。

結果は一週間以内にお知らせします、と言われた。

家に帰って、あの面接官の感じなら受かるだろうな、と思いながら、この嬉しい気持ちがなんなのかなぁ、とぼんやり考えた。

父がやっていた水産加工の仕事。

私がやってきたプログラムの仕事。

父が水産加工場で働くことで育ててもらったのに、実家を離れ、父とは全然違う仕事をしていた自分。

父が死んだ時、自分は父からなにも受け継げなかった、という思いを持ったことを、ふと思い出した。

そして、ああそうか、父と同じ仕事をすることになりそうで、それは父の仕事を受け継ぐみたいな感覚で、それが嬉しいんだと気付いた。

★ ★ ★

その日の夜、総務の方から「採用されました」という電話がかかってきて、受かるとは思っていたけど思ったより早い返答にびっくりしながら、ほっとした。

面接をすることは母に伝えてあったので、結果報告の電話をし、喜んでもらってる中で、自分はプログラムの仕事に少し負い目があった、父さんの仕事を無視して東京に出てきて好き勝手にやってきたから、と話したら、母は「あら、そうなの。好きなことを仕事にしたから、そんな風に思っていたなんて知らなかった」と、少しびっくりしながら、こんなことを話してくれた。

「そういえば、あなたはお父さんが亡くなった時、魚のさばき方を習っておけばよかった、って言ってたよね。とことん技術の子なんだと思ったよ」

そんな話をしたことなんて、すっかり忘れていた。

でも確かにスーパーなどで魚をさばく人をみるたびに「ああ、自分は魚がさばけないんだよな。悔しいな」と感じてはいて、でもそれが父の死をきっかけに持った思いだということは忘れていた。

これからこの仕事をすることで、少しでも父の仕事を受け継げるかも知れない。

自分で選んだというよりは色々な偶然が重なって決まった仕事だけど、これが今自分がやるべき仕事なんだと思えたこと。

それは本当に嬉しいことだ。

★ ★ ★

少し後日談。

働き始めて一ヶ月ほどして、父が勤めていた会社の加工品が職場にきたことがあった。

もしかしたらいつかくるかな、来たら嬉しいなと思っていたので、見つけた時は声を上げた。

それはホタテのお刺身で、実家でもよく食べていたもの。

偶然が重なるにしても色々重なりすぎで、これはもう父が応援してくれてるんだな、としか感じられなくなった。

それと、この職場には、北海道出身の69歳のおじさんがいて、口が悪いながらとても良くしてくれるんだけど、「俺はお前の両親からお前を育てることを任されてるからな」と言ってくれたりしている。

この出会いも偶然とは思えなくて、そこに父の気配を感じたりしている。

働き始めて4ヶ月半。そんな感じで毎日を過ごしている。

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