「ビタミンF」重松清 [それでもどっこい生きてます]
ん。ここにもまた直球を投げる作家がいました。
30代後半のちょいとくたびれた主人公達とその家族のお話がつまった短編集です。
テレビや新聞におどる「いじめ」や「離婚」という単語。難しい顔をしてさも分かったような振りをしながらも、実は遠く薄っぺらいものとしてしか感じられないできごと。
それらを、絶望的な解決不能としてではなく、かといって楽観的な人間讃美でもない形で、近くて重いお話として手渡してきます。
なんか、心の圧縮空気を胸に向かって投げつけられているような感じ。
ゴールなんてない、答えなんてない。
過去や未来は、寂しかったり、悲しかったり、うれしかったりして、思い出したり想像したりするけれども、とりあえず今があって、ただなだらかな坂道を登る。
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