「若者の労働と生活世界―彼らはどんな現実を生きているか」本田由紀(編) [それでもどっこい生きてます]
若者がみた、若者の労働と生活の実態。
若者に対するフィールドワークを中心にした本です。
筆者は20代後半から30代後半。
当たり前ですが、この本では、それぞれの筆者の現状なりの「考え」や「解決の方向性」は示されていますが、「答え」は出てきません。
そういう本ではないのです。
現状の日本のシステムを分析し、「この道へは進んではいけない」という認識は共有しつつも、どうすればよいのかを「大きな物語」としては語らない節度を保つこと。政府への批判だけのやり方はとらないこと。
かといって、すべてを「自己責任」として個人に還元する方向性には、真っ向から反対すること。
矛盾、といってもいいと思います。現行のゲームのルールからすると矛盾で一杯ですから。
でも、その矛盾に立ち止まって叫び続けることが、今、大切なんじゃないか。そんなことを思います。
少なくとも、こうやってこの本を読んで、バトンを手渡される人はいる訳ですし。
障害者介助とベーシックインカムについての話もあり、立岩真也の本を読み返したくなりました。
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序章:「若者に見る現実/若者が見る現実」 本田由紀/平井秀幸
第一章:「日本特殊正論の二重の遺産 正社員志向と雇用流動化のジレンマ」 高橋基彰
第二章:「コンビニエンスストア 便利なシステムを下支えする擬似自営業者たち」 居郷至伸
第三章:「ケアワーク ケアの仕事に「気づき」は必要か?」 前田拓也/阿部真大
第四章:「進路選択と支援 学校存立構造の現在と教育のアカウンタビリティ」 大多和直樹/山口毅
第五章:「就職活動 新卒採用・就職活動のもつシステム」 齊藤拓也
第六章:「ストリートダンスと地元つながり 若者はなぜストリートにいるのか」 新谷周平
第七章:「過食症 「がんばらなくていい」ということと、「がんばらなければ治らない」ということ」 中村英代
第八章:「援助交際 「援助交際」体験者のナラティヴ」 仲野由佳理
第九章:「若年ホームレス 「意欲の貧困」が提起する問い」 湯浅誠/仁平典宏
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過去の読書記録:
【2006年2月4日:「「ニート」って言うな!」本田由紀・内藤朝雄・後藤和智】
【2006年2月27日:「多元化する「能力」と日本社会 ハイパー・メリトクラシー化のなかで」本田由紀 】
【2006年8月19日:「弱くある自由へ―自己決定・介護・生死の技術」立岩真也 】
【2006年8月23日:「希望について」立岩真也】
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