「土」長塚節 [それでもどっこい生きてます]
奥さんに先立たれ、子供を二人抱え、貧乏で蓄えもなく、ちょっと蓄えが出来ればそれを失うことを極度におそれ、盗みがバレれば卑屈にあやまり、義父には冷たく当たりながらも心の底では恐れ、最後には家は火事にあってしまう。
そんな救いのない百姓の勘次とその家族をえがいた明治の小説です。
そういう人がいる、生きている、そういう世界がある、ということを淡々と描いたドキュメンタリーのような印象です。
読んでいると、勘次の人となりについて、どうのこうのと言う気になんてなれません。
ただその環境に生れ落ち、生きつづけること、そこには他人が何か言えるようなものはないように思います。
自分も勘次の様に、ただその環境に生れ落ち、生きつづけている、それは他人に何か言われるようなものではないように思うのです。
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